コラム

適応障害とは何か？

適応障害は、ストレスとなる出来事や状況にうまく対応できず、心理的・身体的な不調が現れる状態です。適応反応症ともいわれます。

DSM-5（精神疾患の診断・統計マニュアル）における診断基準を要約すると、次のようになります。

• 特定のストレス因に対する反応として、情緒面や行動面に明らかな障害が3ヶ月以内に出現する
• そのストレス因子の強さに比べて著しい苦痛を感じる、もしくは社会的・職業的機能に著しい支障がある
• 症状は6ヶ月を超えて持続しない（ストレス因が解消された場合）
• 他の精神疾患では説明がつかない

つまり、適応障害は「状況による一時的な反応」であり、「うつ病」とは異なります。しかし、放っておくとストレス因子がなくなった後も症状が持続しうつ病に移行してしまうリスクもあります。

どんなときに起こる？

適応障害の背景には、環境や人間関係の変化、あるいは慢性的なストレスがあります。

たとえば：

• 異動・転職・昇進など、職場の変化
• 学校生活の変化、進学、いじめ
• 結婚・出産・離婚・介護などのライフイベント
• 家族・パートナーとの葛藤や孤立
• ハラスメントや不当な評価

ストレスとなる出来事は、人によって違います。「他人には大したことに見えないけれど、自分にとってはつらい」と感じることこそが重要なのです。

症状のサインに気づくには？

適応障害は、こころだけでなく体にもサインが出ます。

• こころの症状： 落ち込み、不安、焦り、怒り、無力感、涙もろさ
• 行動の変化： 遅刻・欠勤・ミスの増加、無断欠勤、衝動的な言動
• 身体の症状： 動悸、胃痛、頭痛、疲労感、眠れない、食欲不振

「以前できていたことができない」「理由もないのにつらい」と感じたとき、それは「こころが限界を知らせているサイン」かもしれません。

薬よりも大切なのは「環境の見直し」と「ストレスケア」

適応障害の治療では、薬物療法が使われることもありますが、根本的な回復の鍵は「ストレスを軽減する環境調整」と「心理的なセルフケア」です。

たとえば：

• 一時的に仕事量を調整する
• 職場や家庭での対人関係を整理する
• 自分の感情やニーズを言語化する
• 「何がつらいのか」を丁寧に見つめなおす

このような心と環境の両面からの調整が、再発予防にもつながります。

回復を支えるカウンセリング：認知行動療法（CBT）

当相談室では、適応障害のご相談に対して、一般的な傾聴ベースのカウンセリングのほか認知行動療法（CBT）に基づいたカウンセリングを提供しています。

CBTでは、

• ストレスを感じやすい「思考のクセ」に気づく
• ネガティブな自動思考と距離を取る方法を身につける
• 行動を少しずつ変えることで、自信と安定感を回復する

といったアプローチを通じて、日常生活を無理なく整えていくことを目指します。

「どうしても仕事になると動悸がする」

「人間関係の場面になると頭が真っ白になる」

「もうダメかもしれないと感じている」

そうしたお悩みに対して、一緒にひもときながら、必要な力を回復していくお手伝いをいたします。

一人で抱え込まず、ご相談ください

適応障害は「弱さ」ではありません。むしろ、がんばり続けてきたこころと体が、限界を教えてくれているサインです。

「自分が悪いんじゃないか」

「こんなことで相談してもいいのかな」

そんなふうに思う必要はありません。

あなたのこころが置かれている環境や、これまでの積み重ねを大切にしながら、無理のないペースで回復していく道を一緒に探していきましょう。