カウンセラーにマイナス感情を感じた時、どうするか?

目次
はじめに――その気づきと表現が、カウンセリングの手がかりになる
カウンセリングを受けていると、「カウンセラーに対してイライラした」「何だか嫌な気持ちになった」「わかってもらえていない気がする」といった、マイナスの感情が芽生えることがあります。
そんなとき、あなたはどんな選択をするでしょうか?
「言ってはいけない」「こんな気持ちをぶつけたら嫌われるかも」「我慢しよう」と、心の中にしまいこんでしまう──そんなふうにしたくなるかもしれません。
それは、これまでの人間関係に影響されたとても自然な反応とも言えます。
でも実は、こうした「ネガティブな感情」こそ、カウンセリングであなたが前に進んでいくための、そして変化を手にするための大切な手がかりなのです。
マイナス感情を「言ってはいけないもの」にしなくてよい
カウンセリングは、人は「何を感じてもよい」のだと知っていく場所です。ポジティブな気持ちだけでなく、カウンセラーへの違和感や怒り、不信感、寂しさなども、心に浮かんできたとしたら、大切な「あなたの気持ち」です。
それらを、はじめはためらいながらあるいは曖昧な表現から、言葉にしてカウンセラーに伝えてみようとしていくこと。この試みは、衝突を避けるために自分を抑え込んでしまったり他者と距離を置いたりするような、これまでの対人関係のパターンを変えていく第一歩になります。
「こんなことを言っても大丈夫だろうか」と不安に思ったとしても、むしろ、その「怖さ」や「迷い」をそのまま伝えてみることが、カウンセリングでは大切ですし、カウンセラーはそうしたあなたの不安やためらいも受けとめます。
カウンセラーは、あなたの感情を否定することはない
「こんなことを言ったら気分を害されるのでは」と心配する方もいますが、カウンセラーは、あなたの感情を批判したり否定したりすることはありません。
どんなにネガティブな感情でも、それは「あなたの中に生まれた自然な反応」であり、これまでの思考パターンや対人関係のパターンを知っていくための重要な糸口となります。
伝えていただくことで、今まで対人関係で陥りがちだったパターンを学ぶことにつながったり、これまでの関係では誤解やすれ違いという結末になっていたシナリオの変化につながったりしていきます。
カウンセリングを、これまでのコミュニケーションのパターンを理解し、新たなパターンの練習をしていくための場として、安心して様々な気持ちを表現していただけたらと思っています。
「陰性転移」という心のはたらき
カウンセリングで感じるマイナス感情の背景には、「陰性転移」という心のはたらきが関わっていることがあります。
転移は、過去の重要な他者(たとえば親など)への感情が、カウンセラーに向けられることです。転移は言動にも表れます。
陰性転移とは、クライアントが過去の重要な人間関係で抱いた怒りや不信感、敵意といったネガティブな感情が、カウンセラーへの気持ちとして体験されたり、それらに影響された言動がなされたりすることです。
転移・陰性転移の重要なポイントは、これまでの重要な他者との関係に基づいた様々な気持ちが湧いてきて、言動にも影響するということ、これらがカウンセラーの態度と直接の関係なく生じてくるということです。
転移や陰性転移が生じてくるのは自然なことで、それは、これまでの対人関係のパターンを理解していく鍵になります。
カウンセリングでネガティブな感情が湧いてくるこうしたこころのはたらきが存在することを知ると、ネガティブな感情を、より表現しやすくなるかもしれません。
気持ちを言葉にしてもよいという事と、その表現方法を知っていく場
ネガティブな感情を抑えたり我慢したりせず、「言葉にしてみる」ことは、これまでの対人関係のパターンを乗り越えるチャレンジでもあります。
本音を伝え、それをカウンセラーに受けとめてもらう体験を重ねることで、「人に気持ちを出しても大丈夫な場面もあること」「気持ちを表現することで関係が壊れてしまうわけではないこと」「相手に受け取ってもらいやすい表現の仕方」と、居心地の良いコミュニケーションの在りようを少しずつ知っていくことができます。
その積み重ねは、日常の人間関係にも波及していきます。「自分のそのままの気持ちを感じていい」「場面や言い方を選びながら表現すれば大丈夫」と思えることは、より自分らしく生きるための力になります。
おわりに──マイナス感情を言葉にすることを変化のきっかけに
カウンセリングは、ご自身のあらゆる気持ちと向き合い、どんな気持ちも言葉で表現してよい場所です。
マイナス感情も、あなたの大切な心の声です。
それを言葉にできる体験は、これからの人との関わり方を変えていく大事な一歩になります。
カウンセラーは、あなたの勇気を受けとめます。
ぜひ、安心してその気持ちを伝えてみてください。